運行管理者という国家資格について、その取得方法や難易度などを解説
バス、タクシー、トラックなどを使用して人の移動や荷物の運搬を事業としている業界では、運行管理者の資格が注目を集めています。この資格があることで、会社からの給与や待遇がアップし、やり甲斐のある業務に携わることもできるのです。ここでは、運行管理者の仕事内容や種類、そして取得方法(試験内容)などについて詳しく解説します。
運行管理者とはどういう資格なのか
運行管理者とは、バス、トラック、タクシーなどを運用する自動車運送事業において、人や物を安全に輸送するにあたって必要な措置を講じなければならない責任者です。正式名称は「自動車運送事業における安全輸送の責任者」です。国土交通大臣(国土交通省)が定期的に実施している運行管理者試験に合格した者などの中から選抜されるので、運行管理者は国家資格という扱いとなっています。車が普及し始めて社会的にモータリゼーションが加速し始めた1960(昭和35)年に始まりましたので、非常に歴史がある資格です。
運行管理者は、ドライバーとは異なるあり方で自動車運送業界に深く関わる、決して欠かせない存在といえます。ドライバーが主役とすれば、運行管理者はその主役を陰から支える「縁の下の力持ち」です。ドライバーから運行管理者へとキャリアアップする人も多くいます。
運行管理者(国家資格)の仕事内容と取得するメリットと運転できる車両例
ここでは、運行管理者(国家資格)の仕事内容と取得するメリットと運転できる車両例について説明します。
仕事内容
運行管理者は、バス、トラック、タクシーなどを運行するドライバーの疲労状況や健康状態を常に把握していなければなりません。もし、疲労や健康状態の把握が不十分で適切な配慮をしていないと、そのせいで交通事故を起こすおそれがあり、運送している人や物だけでなく、周囲の人や物も事故に巻き込んでしまうおそれがあります。そうなれば、ドライバーや会社が民事・刑事・行政ともに重大な法的責任を負うので、そうした状況を回避するために、運行管理者の仕事には大きな責任が課されるのです。
そのぶん、運行管理者は自動車運送業界で必要な人材として重宝されるので、やり甲斐は大きく、職場での居場所も感じられることでしょう。運行管理者について定められた法制度のもと、運送業界では営業所ごとに1名以上の運行管理者を配置することが義務付けられているからです。車両を多く保有するなど、規模が大きな運送会社では法令に定められた複数人の運行管理者を置かなければなりません。
運行管理者は交通事故などのトラブルを回避するためのドライバーの健康管理やスケジュール(シフト)管理のほか、車両の点検や修理の指示、ドライバーの点呼、休憩・睡眠施設の保守管理、運送ルートの設計や確認などの業務を担当します。ドライバーが酒気帯びで業務に入っていないかを前もって確認するのも、運行管理者の任務です。悪天候や緊急事態の場合にも、できるだけ安全かつ安定的な輸送を確保するため、どのようにルート、シフトを変更するか、あるいは輸送を中止するのかを決定するのも運行管理者です。必要に応じて、各ドライバーに指導し、監督することもあります。その責務は重大というべきでしょう。
メリット
運行管理者の資格を取得すれば、自動車運送業界からは即戦力としてみなされるので、就職・転職、昇給・昇進などに有利となるでしょう。資格手当として、数千円から数万円が給与に追加で支給される会社もあります。運行管理者の資格があることによって、一般的な事務スタッフよりも高い給与を得られやすく、会社に対して対等な立場で意見を言えるようになる可能性もあるのです。
運転できる車両例
運行管理者は、トラック、バス、タクシーなど、事業用自動車を安全に運行させる役割が課されています。運行管理者自身が運転することは義務付けられていません。しかし、二種免許などトラック、タクシー、バスを運転するスキルがあれば、運行管理者が事業用自動車のドライバーを兼任することも問題なく行えます。
運行管理者資格の種類(区分)と違い
運行管理者資格には、一般乗合旅客機、一般貸切旅客機、一般乗用旅客機、特定旅客機、貨物の5種類があります。前者4種類を総称して「旅客」の運行管理資格者という場合もあります。つまり、旅客は人の輸送、貨物は物の輸送を担当する事業用自動車の運行をそれぞれ管理するのです。運行管理者の資格を正式に取得すれば、運行管理者資格証が発行されます。
また、運行管理者よりさらに上位の「自動車運送事業責任者」という資格もあります。自動車運送事業責任者は、会社の運送事業全般を管理する資格で、難度が高いとされています。
運行管理者(国家資格)の取得条件
運行管理者は「運行管理に関して1年以上の実務経験を有すること」か、「基礎講習と一般講習を修了していること」のいずれか1つの条件を満たしていると、試験を受ける資格を取得できます。つまり、1年以上の実務経験さえあれば、講習は修了していなくても受験できますし、その逆も同様です。
さらに高度な運行管理資格といえる「自動車運送事業責任者」を取得するには、5年以上の実務経験に加えて、基礎講習や一般講習を修了していなければならず、そのうえで試験に合格しなければなりません(なお、試験が免除される場合があります)。自動車運送事業責任者も、運行管理者と同様「一般乗合旅客機」「一般貸切旅客機」「一般乗用旅客機」「特定旅客機」「貨物」の5種類が用意されています。まずは運行管理者として活動し、キャリアアップとして自動車運送事業責任者にチャレンジする順序をたどるのが一般的です。
運行管理者(国家資格)の取得方法、流れ、期間
運行管理者試験の受験申し込みは、運行管理者試験センターのウェブサイトから行うことができるので、願書は基本的に必要ありません。運行管理者試験は、年2回のペースで実施されるのが通常で、試験会場名が記載されている受験通知書が、試験当日の2週間前ごろに送付されます。当日は指定の会場に向かいましょう。運行管理者試験はPCを使って実施され、「法令・規則」「安全・セキュリティ」「技術・保全」の3分野から出題されます。試験時間は3時間と設定されています。
運行管理者(国家資格)の取得費用
運行管理者試験の受験手数料は、6000円です。新規受験の場合、システム利用料として別途660円がかかります。さらに試験結果レポートを希望する場合にも、手数料が別途140円かかります。
運行管理者試験の受験難易度と合格率
令和4年度(2022年)の運行管理者試験では、合格率が貨物で32.3%、旅客で40.1%となっています。例年、基本的に旅客の方が合格率が高くなっていますし、近年では合格率が徐々に下がる傾向にあります。つまり近年になって運送業界での運行管理者の注目度が増すにつれて、難易度が上がっているのです。試験の実施年度によって受験者数や合格率も変動します。
とはいえ、受験難易度に一喜一憂すべきではありません。自分自身が合格ラインを超えることが重要なので、その目標に向かって前もって試験対策のための勉強を続けて、確実な知識を身につけていく必要があります。ほかの受験者がほとんど知らないようなマニアックな知識を身につければ、出し抜けるような感覚を持つ人もいますが、それではかえって逆効果です。むしろ、ほかの受験者がほとんど解けるような問題を確実に取りこぼさないようにする、基礎重視の学習を心がけるべきです。もちろん、一夜漬けの勉強で通用するような試験ではありませんし、試験勉強のせいで普段の運行管理業務がおろそかになってもいけません。
運行管理者(国家資格)は、運送業界で活躍するために大切な資格
バス、トラック、タクシーなどの業界は、人の生命や財産を預かる、非常に重要で社会的に責任の重い仕事を担っています。それだけに、ドライバーを管理する運行管理者の役割も、ますます大切になっているのです。資格を取得するには相応の努力が必要ですが、取得すれば会社からの待遇もよくなりますし、経営者から「君がいないと困る」といわれるほど会社に欠かせない存在になることもできるでしょう。